*イタリア語の先生の思い出
イタリア語の先生はローマから単身で来ていたのですが、時々スーパーで会うことがあり、授業中に料理の仕方を教えてもらったりしていました。授業には毎日きちんと遅刻もせず出ていたので、成績は“8”をくれました。私よりイタリア語がはるかに上手な日本人の若い人は“6”でしたので少し変だとは思いましたが、彼らはよく遅刻をしたり、あまり質問もしなかったからでしょう。この先生は、住んでいたアパートの下の階でガス爆発があり、先生の部屋も壊れて、大変な目に会われたのですが、よくみんなに親切に教えてくれました。この先生の最後の授業の時には、花束を渡し(私は誰が買って来たのか知らないのですがイタリア人らしいところがいい)そしてそのあと、クレモナのドゥオモ広場に行き、みんなでアイスクリームを食べたのが良い思い出です。ローマに帰られてからも、この先生の息子さんがクレモナの近くの大学で法律を勉強されているので、クレモナに時々来ており、一度はバッタリ、通りで会ったことがあり、息子さんが先生と私が並んだ写真を撮ってくれました。
このように2年生の時には、素晴らしい同級生や先生たちに恵まれ、本当に楽しい学校生活でした。
こちらクレモナは日中は最高気温が25度を超えており少し暑いですが、朝晩は15度前後で過ごしやすい日が続いております。新しいアパートにも慣れ、以前のアパートとは違った本当のイタリアの生活を楽しみながら元気でやっております。ただ最近、心にゆとり?ができたせいか少し太り気味です。油断をするとすぐ太る体質ですが、食事を見なおしてカロリーの少ない日本食中心の食事に変えようとしています。食べ物のことがでたのでもう少し書きますと、クレモナでも魚を刺身で食べることが出来ます。一軒だけ新鮮な魚を売っている店があり、曜日が限定されるのですが鮪やイカなどを刺身で食べることが出来ます。但し、かなり高い(肉の2~3倍くらい)ので日本のように毎日は食べられません。他の食材では、最近東洋系の食材を売っている店ができ、インスタントラーメン、素麺、豆腐、シナチクなどがあり、また醤油や米などは安く買うことが出来ます。ミラノに行けば日本料理屋もあり、食材もいろいろあるのですが、なかなかいきませんので助かります。
さて、本来の目的のバイオリン製作は、学校の実習ではようやく「渦巻き」の製作が終わり、5月初めから本体の製作に入ったところです。ただ学校は6月中旬から休みに入りますので、このままではこの1年で一台も作らなかったことになり、休みの間、しばらくこちらにいて一台完成させてから帰ろうと思っています。作業用の机も入り家で仕事ができるようになったので加速して早く一台を作りたいと思います。この作業机は実は店の主人(クレモナを代表する世界的に有名はマエストロですが)の話しでは2月末には入ってくるということで1月中旬から待っていたのですが、ようやく5月の12日に入ってきたものです。再三、「何時入ってくるんだ」と聞いたのですが結果的にはこんなに遅くなりました。また「ハッキリしてくれないと困るのだが」といっても「こっちも困っているんだ」と居直られ、随分、困りました。結局、当てにならないと思い、また机は2台は必要と考えていましたので、とりあえず小さい作業台を買って作業を始めたところでした。よくイタリア人は時間にルーズだといわれていますが2、3例をあげてみます。まず、学校の授業ですが、先生は授業開始前に来ているのですが、職員室(といっても10坪位の小さな部屋)や廊下で長話をして10分~15分位(長いときは30分以上)はよく遅れます。生徒の方もイタリア人の子供達(15歳)はいつも早くから来ているのですが、それ以外のイタリア人やフランス人、それに若い日本人もよく遅刻します。二つめの例は、テレビの放送時間です。日本では7時のニュースといえば7時の時報と同時に始まりますが、イタリアではそんなことはなく必ず(多いときには2分位)遅れて始まります。そのときは画面に時計がうつり、針が回っているだけです。また他の番組も予定通りに始まるとことはほとんどなく、例えば8時35分から映画が始まることになっていてもその時間にはまだ前の番組を放送しており、5分位は遅れて始まります。初めの頃はそれがよくわからなかったので今日は番組が変わったのかと思ったりしていましたが、あとでまたそのチャンネルに戻すとやっておりだんだん理由が分かってきました。最後の例は、駅の時計です。日本の駅では仮に時計が複数あった場合、どの時計も時間は同じに合っていると思うのですがイタリアでは合っていることはほとんどありません。駅の時計が全然、あてにならないのです。時計が止まっていても、また遅れていてもそんなに気にならないのだと思います。こんな訳でNHKやJRの職員がみたらきっとビックリされると思うのですが、ちょっと日本では考えられないほど時間にいい加減です。
この2ヶ月のトピックスですが先ずイタリアにきて初めての経験として復活祭がありました。学校は4月20日から1週間休みでしたが一般の方は3日間位の休みで、それでもこの休みを利用して旅行に出かける方も多く、車の渋滞があったようです。もちろん教会ではミサなどのいろいろな行事がありましたが思ったより教会に行かれる方は少なく、日本のお盆のような感じで家族で集まって食事などをしている方が多いようです。私は家内と一緒にモーツァルトがイタリア旅行をした跡を追ってオーストリアのインスブルックと北イタリアのブレッサノーネ:Bressanone(ドイツ語ではブリクセン:Brixen)、それに日帰りでベローナ、フィレンツェに行って来ました。インスブルックではモーツァルトが1回目の旅行で泊まったホテルに泊まりましたが、古いホテルで食堂や階段はその当時のままのようでした。ブレッサーノーネにはモーツァルトが弾いたオルガンが教会にあり、それを見てきました。駅からその教会まで歩いて行きましたが、街並みがきれいで緑が多く、また山が近くまで迫ってきており非常に美しい町でした。
それから学校の旅行が5月17、18日にありました。場所は北イタリアのTrentoとBolzanoの中間あたりの東側で製材所などを見てきました。学生達に実際の現場を見せようと毎年ある旅行で、希望者だけの参加でしたがそれでも7割くらいは参加し約60人いました。4ヵ所の製材所や木を乾燥させている工場を見学したのですが説明がイタリア語でしたので(当然ですが)そんなに理解はできませんでした。ただ、バスからのドレミテ渓谷の景色がすばらしく、また空気もおいしく楽しい旅行でした。機会を見て、ぜひもう一度いってみようと思います。それにバス旅行でしたのでイタリア人との旅行は大変賑やかで面白いです。酒を飲んでいるわけではないのですが先生も生徒も冗談を言い合い、またギターを持ってきている生徒がいて、何人かで唄っていましたがなかなか上手くて感心しました。
5月15日の昼にはイタリア人の子供達(3人とも15歳)を家によんで五目寿しと肉じゃがを食べてもらいました。彼らは、学校の近くにTake-Outの中華料理屋があるので「焼きそば」や「チャーハン」はよく食べているのですが日本食は食べたことがないということで、やはり、「五目寿し」は一人しかよく食べてくれませんでした。イタリアには無い蓮根やかんぴょうが入っていたことも関係したとは思いますが、おそらくイタリア人からすると日本食はかなり甘く感じるからだと思います。逆に日本人はイタリア料理が塩辛いと感じるのですが、この前、同級生のイタリア人の家でスパゲッティを食べたのですが塩辛くて食べられませんでした。また梅干も出したのですがこれは全く3人ともダメでした。以前、中学校のイタリア語コースで一緒の仲間に梅干を出したところかなり好評だったのですが今回は年齢の違いもあると思うのですがだめでした。
それにしても日本のことをあまりしらないことにも驚きます。イタリア人に「日本について何を知っている」と尋ねてもあまり知りません。知らないというよりあまり関心が無いようです。テレビのニュースでもここ2ヶ月間は小渕首相の重態、有珠山の噴火、福岡の高速バス乗っ取りで小渕前首相の死去の報道は私が見たテレビでは無かったと思います。
冒頭に本当のイタリア生活をしていると書きましたが前のアパートでは出来なかった経験をしているからです。まず、大家さんの話しを少しします。以前、ケーキ作りが趣味だと書きましたがケーキだけでなく料理も上手で、時々クレモナの伝統的な料理をいただいています。またアパートの前には小さなスーパーがあるのですがここのご夫婦もいろいろ心配してくださり、「誰かイタリア語を教えてくれる人はいませんか」と尋ねたら、「娘に聞いてみるよ」ということで、1ヶ月前から娘さんにイタリア語を教えてもらっています。それでもまだ心配してくれており私のイタリア語を何とかしようとして、買い物に行くと大体15分くらい話しをしています。日本ではコンビニが多くて昔ながらの店は少なくなっていますが、クレモナにはコンビニはなくまだ個人経営の店が多く、あまりお客さんが多いわけでもないのですが充分に経営が成り立っているのが不思議です。先日も昼休み後に店に行ったのですがお客さんは誰もおらず店の奥は明かりをつけておらず暗いので、「今日は休み?」と聞いたら「イヤ、やっているよ」といって笑っていました。おそらく近所の常連のお客さんがいてこの店を応援しているのだと思いますが、お客さんとご夫婦が大きな声でやり取りしているのを聞いているとしばらくは店から出られなくなります。イタリア人はほんとうに話し好きで日本人からみると大したことは話していないのですが、何でこんなに長く話しているのだろうと思うことがよくあります。
学校は6月10日迄でいくつかの教科では期末試験が始まっています。また6月12日からは入学試験が始まり、日本からも数人受けられるようですが去年の試験を思い出します。あれからもうすぐ1年が経ちますがお蔭様で何とかここまで楽しく無事にやれてこれました。皆様の応援に感謝いたします。