No.4 2000.2.17記

その後、皆様お元気ですか。東京では雪が降ったようですが、こちらクレモナでは2月の初めに雪が降ったくらいで思ったより暖かく、良い天気が続いています。

 先ずはじめに2月5日に引越しをしました。今までのところと家賃は同じですが(65万リラ=約4万円)、一つ部屋が多く工作用の部屋が取れ、また家具や周りの環境も気に入ったので決めました。以前からアパートを探していたのですが、外国人に対して冷たい不動産屋が多く、いやなこともあったのですがようやく見つかりました。大家さんが親切な人で(あまり欲の無い人です)、即入居出来るのですが今まで住んでいたアパートに次の人が見つかるまで待ってもいいということで、遅くとも3月初めまでに入居することになっていました。それが今まで世話になった不動産屋のお蔭で、次の人がすぐに見つかり、急遽、引越しすることになりました。引越しは、ダンボールが10個ぐらいと蒲団、バケツなどがありましたが、レンタカー(トラック)を使ったので、私を入れて4人でしたが、出すのに10分、入れるのに15分位であっという間に終わりました。引越しが終わったところに大家さんが見え、「引越しの挨拶に」とケーキとガス入りのワイン(スプマンテというのですがシャンパンと同じようなもの)を戴きました。大家さんはケーキ作りが趣味?で今までにも会う度ににケーキを出してくれ、12日の土曜日も「引越しのお礼のパーティをやるんだ」と話したらクッキーを持ってきてくれました。それが非常に美味しく、こちらで売っているケーキは甘すぎるのが多いのですが適度な甘さで、仲間たちも「おいしい、おいしい」といって食べ、また次を期待して私の家に来たいといっていました。大家さんは、同じ階のすぐ向かいに住んでいるのですが、73歳で一人暮らしです。娘さんが一人いて、クレモナに住んでおり、小学校の教師をしているのですが、夕方には大家さんのところに毎日のように寄っています。イタリアに住んで感じたことの一つは肉親への情が深いということです。日本よりも一人暮らしのお年寄りは多いと思いますが、よく面倒をみているなぁと感心させられます。なお、建物が16世紀のものらしく?(通訳してくれた日本人の同級生の話しです)、かなり古いので床が少し傾いています。周囲の建物では、近くの教会は13世紀に建てられたものです。自分の部屋の床が傾いているので、気になって周りの建物を見ていたら、私のアパートは建物は傾いてはいませんが、道をはさんだ隣の建物はかなり傾いており、自分のところは大丈夫だと安心したりしています。また、入居してから昨日まで、電話、暖房器具、電気のトラブルがあり、暖房が使えない日がこの10日間で2日ありました。夕べもオーブンを使っていたらブレーカーが飛び、そのあと元に戻そうとしたのですが戻らず、周りの人もわからず、結局電気が使えず蝋燭と暖房なしの夜でした。「もうこれが最後のトラブルにしてくれ」と祈るしかないのですが、日本とはかなり違い、あきれるほど面白いトラブルが多いです。怒る気にもなりません。ただ、こういうことがあっても何事も無かったように毎日生活しているのがまたイタリアの不思議なところです。バイオリン作りでは良く言われるのですが、日本人(ドイツ人もそうですが)はきちんと作るのですが、アンバランスな作りのイタリア人の楽器の方が音が良いのです。私の部屋も傾いていたりしてアンバランスですが、あまりそれを感じさせないでうまくまとめあげており、イタリア人の不思議なところです。
 学校の方は、前期の成績発表があり、他の同級生の日本人より良い成績でした。というのも先生達が、私と同級生のウクライナ人はだいぶ年を取っているということで甘く点を付けているからです。何とか3年生になれればそれでよいのですが・・・・・・。
 この他の話題としては、1月の中旬にマントバ(クレモナから車で1時間くらいのところ)で諏訪内晶子の演奏会があり、同級生の日本人3人と行ったことです。曲目はチャイコフスキーのバイオリン協奏曲でした。会場は小さなホールで(おそらく千人は入らない)、舞台も狭く少し気の毒な感じがしましたが、すばらしい演奏でした。演奏後、舞台裏で彼女と会い少し話しをすることが出来たのですが、今はパリに住んでおりイタリアに来る機会もこれからは多くなるだろうと話していました。クレモナにはもっときれいで大きなホールがあり、できればクレモナで演奏会をと考えたりもしているのですが…。
 もうひとつの話題は健康保険に入ったことです。イタリアの健康保険はその年の1月1日から12月31日までの契約で加入します。無収入の学生の場合は年間30万リラを払えば、あとは薬代を払うだけになります。加入すればすぐに主治医を決め診察を受けられることになります。私の場合は知り合いのイタリア人がやはり高血圧なので同じ医者にしました。日本から持ってきた降圧剤がだんだん少なくなってきたので、直ぐに加入の手続きをして1月14日に医者に行き、同じ種類の降圧剤をもらい飲み始めました。今のところイタリアの薬の方が合っているようで正常値で問題はありません。
 これからのことですが、ようやく工作ができる部屋も確保できたのでバイオリン作りを自分の部屋でも始めようかと考えています。6月末には日本に帰る予定ですので、それまでには一台完成させたいと思っています。これから先ず、何をモデルにするか決めないといけないのですが、今日、ストラディヴァリ(1715)とアマティ(1658)の実物大の写真を買ってきました。去年の暮れに、クレモナの博物館でアマティ、ストラディヴァリ、グァルネリの3台のバイオリンを同じ人の演奏で聞く機会があったのですが、私はその時は、グァルネリが最もバイオリンらしい音で、少し悲しい音でしたが好きでした。ただスタイルがあまり好きではないのでどれにしようかと迷っているところです。どうなったかは次回のお楽しむに!